[用語整理] 投槍

 投槍とは？

投槍とは槍を投げる行為、もしくは投げる用途で作られた投擲用の槍のことです。英語ではJavelinと呼ばれ、白兵戦用のSpearや長槍の一種であるPikeとも区別されます。東ローマ帝国時代まではDartも投槍を意味する言葉でしたが、その後は今の意味に変わりました。

人間はすべての動物の中で最も正確かつ強力に物を投げる能力があります。霊長類の中には腕力で人間を超える種も多いですが、投げる能力だけは人間より優れた動物はいないです。だから、人類は古くから狩猟や戦争のために投げ道具を利用しており、投槍はその内の一つです。ほとんどの冷兵器が戦場からいなくなった現代でも、オリンピック陸上競技の種目の一つとして残っています。

一般的に、投槍のサイズは普通の槍よりは小さく軽いですが、矢よりは大きくて重いです。弓と比べると貫通力が高く力強いという利点があります。しかしその他の射程距離や連射速度、携帯性などでは劣っているため、破壊力を考慮して矢よりは大きく設計されました。代表的な投槍であるピルムの場合は、2m以上の長さで重さは最大5kg程度で、一般的な認識より大きくて重いものです。

投槍は素手で投げることができますが、効率を100%発揮するには投槍機という補助器具が必要です。投槍機は槍の先端に固定して投げるフック＆ソーサー型と、槍の先端にストラップを螺旋状に巻いて、そのひもをつかんで投げるひも型があります。単純な見た目に比べて非常に効果的なので、投槍機を使えば通常の3倍以上遠く飛んでいけます。フック型投槍機は非常に単純な構造で、その気になれば孫の手でも作ることができる位です。

もちろん投槍は投槍機なしで人間の腕力だけで投げても、その威力はほぼ絶対です。投擲という行為の構造上、全ての体重を乗せて投げるので、投槍の威力はほとんど冷兵器を上回ります。そのお陰で、槍が開発された先史時代にすでに人間は食物連鎖のトップに立つことができたのです。人間が個人単位で地球最強になったのは銃の発明後だと言われていますが、種族単位でみるとこの投槍に慣れてきた時期だとも言われる位です。その分、投槍は人類の生存と発展に極めて大きく貢献した行為です。

文明が発展して国家間の戦争が繰り広げられることになってからは、投槍は火薬兵器の登場前までは軍用で使われました。ローマ軍団兵はピルムを一斉に投げてから白兵戦に移り、同様にアズテック帝国の戦士たちも石の投槍を投げ、黒曜石の武器で白兵戦を行うことが基本的な戦術でした。東ローマ帝国も10世紀まで歩兵の20〜30％程度は投槍で武装しました。当時の戦争では、重武装した兵力同士が白兵戦を繰り広げる比重が高く、合成宮系統の強力な遠距離武器が限られていたため、投槍の活用度がその分高かったのです。それから時代が流れ、より発展した投射兵器であるクロスボウの導入と共に投槍の用度は縮まりました。また火薬と銃の普及と共に軍事用の投槍はその姿を完全に消すことになりました。