ザトウクジラはマジ天使！？

ザトウクジラはマジ天使！？

犬の中ではどの子が一番優しいでしょうか？ とかの質問を受けると、私達は殆ど天使犬、ゴールデンレトリバーを思い浮かべます。ならば海で一番優しい動物はどの子でしょう？ この質問には色んな意見が出てくると思いますが、個人的に思う最強候補はザトウクジラ(Humpback whale)です。このザトウクジラは人間が先制攻撃しない限りは非常に穏やかな性格で、周りに危険があるとスキューバダイバー達に警告をしたり、実際に助けてくれるなど人間に色んな善行をしてくれる動物なんです。ここまでは他のクジラ達と大差はありませんが、ザトウクジラの善行は同族や人間にも限らず、完全に別の種の動物の命さえ助けようとする、まるで天使のような性格を持っているのが衝撃的なのです！

一般的に、生物は直接的に自分利益にならない行動はしないと思われてきました。特に、自分達とは天敵関係の動物を敵対する場合はもっともです。しかし、ザトウクジラは例外です。彼らの数少ない天敵の一つがシャチですが、ザトウクジラはシャチが他の動物を襲う場面を見ると、躊躇なく現場に突入し、全力でシャチを阻止しようとします。ところが、同族が襲われた時だけではなく、関係の無い完全別種の動物が襲われる時も、それに介入してシャチと戦います。 

2016年に発表された研究論文では、シャチの攻撃を邪魔したザトウクジラの事例を60年以上にわたって集めた観測記録が公開されました。これによると、同じザトウクジラが攻撃を受けた割合はわずか11％に過ぎなかったです。残りの89％は、シール・アシカ・イルカであり、中には哺乳類ではなく魚類の場合もあったそうです。 

当然の事ですが、ザトウクジラの救助活動は10〜20分程度では終わりません。ザトウクジラはシャチとは違って、牙を持っていないので、武器になるような要素はその巨大な体くらいです。また素早さではシャチに劣るので、積極的にシャチを攻撃するより、狙われた動物の周りを泳ぎながら保護する方を選びます。通常、複数のザトウクジラがこの防御活動に参加し、この活動はシャチが諦めて撤退するまで続くので、少なくとも数時間以上掛かってしまいがちです。

ザトウクジラの立場では、時間とエネルギーを大幅に奪われるため、このような救助活動は損するばかりです。相手するシャチも海最強の捕食者と呼ばれるだけに、ザトウクジラとて怪我を負う可能性だったあります。にも関わらず、ザトウクジラは積極的に他の動物達を守ろうとします。これについては、色んな説がありますが、一部ではザトウクジラの群れを維持するための行動だと主張する研究者もいれば、ただ他の種を助ける利他的な行為を好むと捉える見解もあります。まあ、ザトウクジラが正確に何を考えて助けているのかは、会話でもしてみない限りまだまだ未知の領域です。