なぜ死んだクモは脚を縮める！？

 なぜ死んだクモは脚を縮める！？

家で掃除をしていると、誰もが一度くらいは細長い脚をすぼめて死んでいるクモを見つけた事があるでしょう。よく観察してみれば、足が胴体に沿ってギュッと縮んでいる事が分かりますが、これはクモの脚が持っている特殊な構造によるものです。人間のような脊椎動物の脚を動かしているのが筋肉であれば、クモの脚を動かしているのは筋肉ではなく「水液」だからです。 

クモは、基本的に流体の力で脚を伸ばしています。クモの脚は薄い管がつながっています。その管がつながっている部位である関節は、その機能上人間の関節と殆ど一緒です。一般的な動物の場合には、足を伸ばすための伸筋と曲げるための屈筋がセットになって、筋肉を形成します。

しかし、クモの脚の関節には、屈筋しかありません。伸ばすための伸筋がないので、クモはその代わりに血液リンパを脚に送って加圧する方式を取っているのです。ところがクモが死んでしまうと、この血液リンパの圧力が失われてしまいます。これによってクモの脚には収縮を妨げる要素が消えてしまい、結果的に脚が縮まれた状態になってしまうのです。では、なぜクモは伸筋を使わない、水圧式の脚を導入したのでしょうか？

その疑問については、進化の過程で、より強い屈筋を得るためだと推測されています。大きさに比べると、クモの屈筋は驚異的な力を持っています。クモは屈筋を使って獲物を捕らえたり、地下室の壁を上ったりします。つまり、伸筋を持つ負担を除去することで、屈筋の力を極大化したのです。またクモは、この強力な屈筋を移動するのに活用することもあり、屈筋を収縮させて足の関節に強い圧力をかけた後、これを一気に解放させて空を飛ぶ事もできるのです！