完全競争市場の限界とその意義

INDEX

1. 完全競争市場とは？
2. 完全競争市場の仮定
3. 完全競争市場の限界とその意義

 

 

1. 完全競争市場とは？

 

完全競争市場とは、経済学でよく扱われる理想的な市場モデルの事です。簡単にいうと、完全な競争が行われる為、市場価格の形成に関し、特定または少数の生産者や消費者の影響力が皆無である市場を意味します。

 

経済学的にみると、最も効率的な形の市場ですが、同時に現実的にはありえない、理論的なモデルなんです。

 

 

 

 

2. 完全競争市場の仮定 

 

完全競争市場には、以下４つの仮定が必要です。

 

 

1) 多数の需要者と供給者

 

生産者と消費者が非常に多く存在している事を仮定します。この場合、個別生産者がいくら生産量を増え屋しても・また減らしても、市場価格には何の影響も及ぼせません。同じく、個別消費者がいくら消費量を増え屋しても・また減らしても、市場価格には何の影響も及ぼせない事を意味します。

つまり、完全競争市場での生産者と消費者は、市場価格をそのまま受け入れるプライス‐テーカー(Price taker)として行動する事になります。

 

 

 

2) 財貨の同質性

 

市場での供給者は、皆が同質商品を生産・供給する事を仮定します。これにて、完全競争市場内で取引される、全ての商品は同一品質をもち、代替可能である、正しく完全な同一品である事を意味します。これは、完全競争市場での商品間の違いを、「価格」だけに絞るの仮定です。

 

 

 

3) 市場参入・退去が自由

 

全ての生産要素の完全移動性を仮定しています。つもり、誰でも制限なく特定産業への参入・退去をする事ができ、既存の生産要素を利用して他の財貨を生産する事に、何の制限もないとの事です。

 

 

 

4) 完全な情報

 

経済主体たちが、取引に関する全ての経済的・技術的情報を保有している事を仮定します。市場の全ての参加者が、完全な情報を持っている事を仮定する為、情報の非対称性が発生しなくなり、製品の市場最低価格で取引される一物一価の法則が成立する事になります。

 

 

 

 

3. 完全競争市場の限界とその意義

端的に言うと、完全競争市場なんて理想的な形の市場ではありません。正直、上記の条件が満たされる事は不可能であり、もし満たされるとしても別に人間に便利な状況を作る訳でもありません。

にも関わらず、経済学で完全競争市場を仮定する理由は、物理学や化学で理想気体を仮定する事と全く同じです。理想気体は現実には存在しないが、これを前提に、我々は多くの科学法則が成立する事をシミュレーションできます。

 

したがって複雑な現実の市場を完全競争市場として単純化させる事によって、一部の特定要素の変化が全体にどの様な影響を与えるのかをシミュレーションし、把握する為です。これを通じて我々は、どの政策が現実的に必要になっているのか、今より効率的な市場を作り出す為、何をすべきかを検討できる様になるのです。